ローマの歴史-9 −塩野七生さんの「ローマ人の物語」より−
IX 賢帝の世紀 AD97 ・10/27 ネルヴァはトライアヌス（ 44才，イベリア半島出身者，高地ゲルマニア軍団司令官）を養子にする（この 1件でネルヴァは 5賢帝に含まれると言う人もいる）
・元老院はトライアヌスに「インペラトール」の称号と護民官特権を与え，次年度執政官にネルヴァと共に立候補することを決める（トライアヌスを共同統治者に指名）AD98 ネルヴァ死亡
トライアヌス即位・1/27 ネルヴァ（ 71才）死亡，遺灰はアウグストス廟へ埋葬される
・元老院はマルクス・ウルピウス・トライアヌス（ 45才）を皇帝に承認する
・ハドリアヌス（ 22才，トライアヌスの従兄弟の子）はネルヴァの死をドナウ川からコロニア（現ケルン）のトライアヌスに馬を駆って知らせる，その後ハドリアヌスはトライアヌスの許に留まる
・トライアヌスはローマへ戻らずライン前線に留まる
・トライアヌスは近衛軍団長官と同調者数人をケルンに呼び寄せる，ケルンに着くや全員が殺される（近衛軍団の不穏分子の排除）
・トライアヌスはアティアヌスを近衛軍団長官に任命する
・トライアヌスはダキア戦役に備えて低地ゲルマニア防衛線の完備を行う（高地ゲルマニア防衛線の完備は終了させていた，ドミティアヌス時代の 2倍の兵を投入しライン川防衛線からの出兵も必要と考えていた）
・トライアヌスはドナウ川沿線に移りドミティアヌスが築いた基地間の街道や橋を建設するAD99 ・トライアヌスはリキニウス・スーラ（トライアヌスの親友）に現地でダキア戦役の準備を行わせる（軍団兵 8万，補助兵を含めて 15万）
・夏 トライアヌスはローマに帰還する，トライアヌスは城門の前で馬から降り徒歩でローマに入る（元老院への配慮）AD100 ・9月 小プリニウスは補欠執政官に就任する，就任演説「トライアヌスへの頌詞」が遺る AD101 第 1次ダキア戦役 ・ハドリアヌスは会計検査官に当選する
・ハドリアヌスは元老院でトライアヌス不在時の書状代読の役目もしていたが地方訛りのラテン語を笑われる，ハドリアヌスはラテン語を猛勉強する
・3/25 トライアヌスはダキア兵攻撃の報でローマから出陣する，ドナウ川を 1Kmを越える舟橋で渡りルーマニアのベルズビス（現レシツァ）からダキアの首都サルミゼゲトゥーザへ向かう（トライアヌスの円柱には行軍場面が続く），宿営地を築きながら進軍する，タバエの戦いが行なわれる，冬が近付きトライアヌスはドナウ川沿いの基地に戻る
・ダキア王デケバロスはドナウ下流のローマ軍団基地ノヴァを攻撃するがドナウ川渡河で多くの兵を失う，トライアヌスは船隊を率いて 600Kmを移動する，上陸してマウリタニア騎兵を出動させる，白兵戦となり陽が落ちるまで続くがローマ軍は第 1戦で勝利する，第 2戦は平原の会戦で行われローマ軍が勝利する，トライアヌスはドナウ川沿いの基地で冬越しをするAD102 ・ローマ軍はドナウ川を再度舟橋で渡る，トライアヌスとリキニウス・スーラは西からダキアの首都サルミゼゲトゥーザへ向かう，ルシウス・クィエートゥスが率いる騎兵は前年のダキア軍ルートで東からの攻撃に向かう，ダキア王デケバロスは講和を求める使節を送るが条件が合わず決裂する，会戦にはならずゲリラ戦になるがローマ軍は森を切り開きつつ進む，再度講和の使節が訪れるがトライアヌスは交渉に立合わずダキアの代表団をローマに送り元老院と交渉させる（ドミティアヌスの平和交渉を意識），元老院は講和する
・ハドリアヌスは元老院議事録係に任命される
・ハドリアヌスはトライアヌスの姪の娘サビーナと結婚する
・冬 トライアヌス（ 49才）はローマで凱旋式を行う，元老院はダキクスの称号を贈るAD103 ・トライアヌスはドナウ川のトライアヌス橋を完成させる（ダマスカスのアポロドロスに命ずる，ローマ兵を動員し 1年余りで完成，全長 1135m，幅 12m，20本の石造橋脚を木製アーチでつなぐ，セルビア側橋脚残欠，ルーマニア側橋脚残欠）
・トライアヌスはダマスカスのアポロドロスに命じてオスティアのクラウディウス港の奥に 6角形のトライアヌス港を建設するAD105 第 2次ダキア戦役 ・ダキア王デケバロスは戦略を変えパルティアに接近するがパルティア王にはその意思がない
・トライアヌスはアラビア（現ヨルダン）併合を行う，シリア属州総督コルネリウス・パルマは 1個軍団で達成する，ナバティ王国に昔日の勢威はなくパルティアも動かない，アラビア属州の州都はブスラに決まる（ローマ派黒海から紅海までの防衛線を確立）
・春 ダキア軍はダキア領内のローマ側宿営地，街道施設中の軍団，ドナウ下流のローマ領内と多方面同時攻撃を行う
・6/4 トライアヌスはローマを出陣する（トライアヌスの円柱に記録が遺る），多数の軍船でアドリア海を渡る，森を切り開きながら進軍する，白兵戦になりローマ軍は少しづつ有利になる，騎馬兵の到着でローマ軍の勝利となる，ダキア軍はドナウ川の北岸に逃げる，秋になり一時休戦になる
・冬の間デケバロスは講和の打診を繰り返す，講和中で監視が緩んでいた街道敷設中の軍団長ロンジヌスと 10人前後のローマ兵が捕えられる，デケバロスはロンジヌスにトライアヌスへの講和の手紙を書かせる（黒海まではダキア領としダキア戦の戦費はローマが負担すればロンジヌスとローマ兵は返還する），ロンジヌスは手紙を書くことを承諾し下僕の解放奴隷に毒薬を調達させる，手紙を持たせた解放奴隷が安全圏に出た頃ロンジヌスは毒薬で自死する，デケバロスは激怒し自らトライアヌスへ手紙（解放奴隷とロンジヌスの遺体の交換）を書き捕虜の百人隊長に持たせる，トライアヌスは講和も交換も無視する（この話はトライアヌスの円柱には無い）AD106 ・春 トライアヌスは反攻を開始する，ローマ軍はトライアヌス橋を渡る，前年ダキア側の攻撃を受けた残存部隊と合流する，ローマ軍は麦の収穫を行う，ローマ軍は包囲壊滅作戦に入る，白兵戦を行いローマ軍が勝つ
・夏 ローマ軍はダキアの首都サルミゼゲトゥーザに到着し攻城戦が始まる，ダキア軍は集団自決する，敗走するダキア軍を追撃する，勝利が決まり兵士達はトライアヌスに「インペラトール」と叫ぶ，追撃が続きダイア王の財宝が川から引き上げられる，追い詰められたダキア王デケバロスはは自死する，銀の盆に載せられた王の首をトライアヌスは実検する，ローマ軍は落人狩りをする（トライアヌスの円柱には第 1次，第 2次ダキア戦役の約 100景の浮き彫りが続く）
・ハドリアヌスは法務官に当選するAD107 ・トライアヌス（ 53才）はローマで凱旋式を行う，ローマは熱狂の渦となる，ダキア王の財宝は公共のものに使うと宣言する，ダキアはローマの属州になる
・コロッセウムでは連日闘技会が開かれ 1万 1千匹の野獣が投入される
・トライアヌスは闘って敗れたダキア人を追放し多くの地方から住民を移動させ住民の総入れ替えをを行う（敗者非同化）
・トライアヌスは「ダキア戦記」を書く（遺っていない）
・前法務官ハドリアヌス（ 31才）は遠パンノニア属州総督に任命される（以前紅章付大隊長として派遣されていた軍団）
・トライアヌスの腹心リキニウス・スーラ死亡AD108 ・ハドリアヌス（ 32才）は次年度執政官に当選する（リキニウス・スーラの推薦）
・トライアヌスはスペインのアルカンタラ橋を建設させる（碑文によれば建設者はユリウス・ラルケでトライアヌスからの援助に感謝するとある）AD109 ・6/22 トライアヌスはトライアヌス浴場を完成させる
・6/24 トライアヌスはトライアーナ水道を完成させる（ブラッチャーノ湖沿岸からトラステヴェレへ，537年に東ゴート族に破壊されたがローマ法王パウルス 5世はパオラ水道と改名して復興する）
・トライアヌスはアッピア街道を複線化しトライアーナ街道を建設する（ベネヴェント，ブリンディシ間），ベネヴェントにはトライアヌス凱旋門が築かれる（トライアヌスはここでは凱旋をしていない）AD110 ・パルティア王パルコスが死亡する AD111 ・アントニヌスは会計検査官に当選する
・トライアヌスはビティニア属州を元老院属州から皇帝属州に変更する
・秋 トライアヌスは小プリニウスをビティニア属州総督に任命する（トライアヌスとの書簡が遺る）AD112 ・ダマスカスのアポロドロスはトライアヌスのフォールム（アウグストゥスのフォールムの 5倍の広さ）を完成させる，フォールムに隣接してトライアヌスの市場が建てられる
・ハドリアヌスはアテネより「アルコン」の称号を贈られるAD113 パルティア戦役 ・5月 トライアヌスのフォールムにトライアヌスの円柱が建てられる
・パルティア新王オスロエスは弟パルタマシリスをアルメニア王に任命する，アルメニア内部で王位をめぐる争いになる
・10/27 トライアヌスはパルティア遠征を決めローマを出発する，トライアヌスは妻プロティーナと姪マティディアを同伴する，ハドリアヌスも同道する，ブリンディシからギリシャに上陸する，アテネにはパルティア王オスロエスの使者が待っておりパルタマシリスのアルメニア王就任の許可を求める，トライアヌスは聴く耳を持たずアンティオキアに到着する
・トライアヌスはハドリアヌスをシリア総督に任命するAD114 ・トライアヌスはハドリアヌス（ 38才）に後を託し女性を置いてアンティオキアを出発する，ヴェスパシアヌスが建設したメテネリ基地に入りさらに北進してサタラ（現トルコのケルキット）基地に入る，トライアヌスは周辺の王や族長を招集する，アルメニアの新王パルタマシリスの姿がない
・トライアヌスは全軍をエレゲイア（現トルコのエルズルム）へ進攻する，パルタマシリスが待っていて前王の妨害でサラタに行けなかったと弁明しトライアヌスが戴冠することに異存はないと王冠をを脱ぎトライアヌスの足許に置く，トライアヌスはローマ皇帝に相談もなくパルティア王が勝手にアルメニア王を決めてよいとはネロの協定に書かれていないと答えパルタマシリス一行の退席を求める，パルタマシリス一行がローマ宿営地を出た所で全員が殺される
・トライアヌスはカッパドキアとアルメニアを統合して一属州にすると発表する，新属州の総督にはカティリウス・セヴェルスを任命する（パルティアとの正面対決に突入）
・夏 トライアヌスの将軍達はアルメニア全土に散りこの一帯の重要都市ニシビス（現ヌサイビン）を陥落しメソポタミア北部はローマ軍の手中に帰す
・首都ローマは狂喜しトライアヌスは以前辞退していた「指高の皇帝」の尊称を受ける
・トライアヌスはアンティオキアに戻らず兵士と共に戦地で冬越しをするAD115 ・トライアヌスは南下を続けティグリス川に至る
・トライアヌスの勝利に喜ぶ元老院は「パルティクス」の尊称を贈ることを決議する
・トライアヌスは冬越しのためアンティオキアに戻る
・トライアヌス滞在中にアンティオキアを地震が襲う，トライアヌスは軽傷を負う，兵士達は凶兆と受け取る
・ユダヤ一帯で反乱が発生する，ユダヤ人はローマ軍団基地は攻撃せずにギリシャ人を攻撃するAD116 ・アントニヌスは元老院入りをして法務官に選出される
・トライアヌスは南下してきた軍団を率いて東に向かいティグリス川に至る，川沿いに南下してパルティア王国の首都クテシフォン（現イラクのバグダード付近）に向かう（アレクサンダー大王の東征路），ユーフラティス川を船で運んだ攻城兵器でクテシフォンを陥落させる，パルティア王オスエロスは逃亡する，兵士達が陥落を完了させる前にトライアヌスは幕僚を従えて古都バビロンを訪れる
・喜んだ元老院は制限のない凱旋式を許可する
・トライアヌスは東征せずに南下する，ティグリス川とユーフラティス川の流れ込むペルシャ湾に達する
・トライアヌスがアンティオキアに戻るとメソポタミア全土が蜂起する，残留ローマ軍はメソポタミア軍のゲリラ戦法で動けなくなる
・トライアヌス指揮下で戦って来た将軍達は大反撃をを主張したが，トライアヌスは病に倒れるAD117 トライアヌス死亡
ハドリアヌス即位・ユダヤの反乱はキレナイカ，キプロス島にも拡がる，エジプト属州長官は解任され代わって派遣された若い武将トゥルボとギリシャ系住民が反乱を鎮圧させる
・7月末 重病のトライアヌスは妻プロティーナと姪マティディアに付き添われてローマに向かう，パルティア戦役の総司令官にはハドリアヌスが任命される
・8/9 小アジアのセリヌス（現ガジパシャ）でトライアヌス（ 64才）は死亡する，死の直前ハドリアヌスを養子に迎え後継者に指名する
・8/11 東方軍団の将兵達がハドリアヌスを「インペラトール」と称呼し忠誠を宣誓する
・簡素な火葬後の遺灰は妻プロティーナ，姪マティディア，近衛軍団長アティアヌスとローマに向かう，帰国したトライアヌスの遺灰を市民と元老院は白馬の凱旋式で迎える
・ハドリアヌスはアンティオキアから元老院に親書を送る，元老院の許可なく軍団の忠誠宣誓を受けたことを謝罪しトライアヌスの神格化も要請する，元老院はプブリウス・アエリウス・ハドリアヌス（ 41才）を皇帝に承認しトライアヌスの神格化も承認する
・ハドリアヌスはトゥルボに鎮圧に成功していないユダヤの反乱に対し早急の終結を命ずる
・ハドリアヌスはブリタニアの反乱に対しても厳たる態度を示し反乱を終結させる
・ハドリアヌスは北アフリカのマウリタニアの反乱に対しユダヤの反乱を収めたトゥルボを送り解決に当らせる
・ハドリアヌスはドナウ川北岸のサルマティア族がローマ領を脅かすことへの解決として自らが出向くことにする，パルティア戦役の総司令官ハドリアヌスをサルマティア族撃退のためにドナウ戦線に移動し東部の防衛線はパルティア戦役前に戻す（パルティア戦役の終結をティベリウスのエルベ川撤退と重ねる）
・ハドリアヌスはトライアヌス配下の将官をトライアヌスの凱旋式に列席させるとして新任地は与えず引退への道を開く
・ハドリアヌスはシリア属州総督にトライアヌスがアルメニア属州総督に派遣していたセヴェルスを任命する（パルテイア戦役からの撤退を目立たせないため）
・11月 ハドリアヌスは軍団を率いて西方に発つ，従えて来た軍団を元の駐屯地に戻しながら進む，ドナウ河口北岸のロクソラーニ族と会見し同盟関係を結ぶAD118 ・ハドリアヌスはドナウ川中流のヤヅィゲス族と同盟関係を結ぶ，さらにドヌ川を遡ってサルマティア族に対してはマウリタニアの反乱を収めたトゥルボを送る
・ドナウ前線に滞在中のハドリアヌスは近衛軍団長アティアヌスから密書を受け取る，トライアヌスの重臣 4人の反ハドリアヌス陰謀が記されている
・ハドリアヌスは秘密裡に返書を送りハヴィディウス・ニグリヌス，コルネリウス・パルマ，プブリウス・ケルスス，ルシウス・クィエートゥスの処置を指令する，近衛軍団は 4名を殺害する（粛清か，古代には存在していたハドリアヌス自筆の「回想録」には殺害までは命じていないとの弁明があったとか），元老院は驚く
・7月 ハドリアヌスはローマに帰還する，ハドリアヌスを迎えたローマの空気は冷たい
・ハドリアヌスはアティアヌスを近衛軍団長から解任する
・ハドリアヌスは元老院で 4名殺害について弁明をする，以後絶対に元老院議員を裁判なしに殺害するような不祥事は起こさないと誓う
・ハドリアヌスは市民に大盤振舞いをする，コロッセウムやチルクス・マクシムスで剣闘士試合や戦車競走の提供を行う（一時下勅金の額は通常の 2倍），地方自治体や属州からの黄金の冠を贈る慣習に関しては本国は全廃し属州は半額の物にする，ハドリアヌスはこれを法制化する（トライアヌスが法制化した説もある），ハドリアヌスはトライアヌスのフォールムの大広場で税の滞納分の全額取消しを告げ滞納者帳簿のパピルス文書を焼く（ 9億セステルティウスの歳入減），しかしハドリアヌスは 15年おきに不動産登記をやり直すと決める
・ハドリアヌスは新しい銀貨と銅貨を発行させる
・ハドリアヌスはトライアヌス浴場に通う（浴場の壁に身体をこすり付けている老いた百人隊長に出会う，ハドリアヌスは昔の部下に垢落としの奴隷を贈る，トライアヌスの重臣 4名殺害に対する冷たい雰囲気は好転する）
・ハドリアヌスはアグリッパが建設した長方形のパンテオン（汎神殿）が焼失していたので円型堂として再建を開始させるAD120 ・アントニヌスは執政官に選出される AD121 第 1次視察旅行 ・1/24 ハドリアヌス（ 45才）の誕生日，競技会が開催される，ハドリアヌスは市民全員に下勅金を配布する（皇帝巡視旅行の前祝）
・4/21 ローマ建国記念日にハドリアヌスはユピテル神殿に参拝しヴェヌス神殿を建立すると発表する
・4/26 マルクス（後の皇帝マルクス・アウレリウス）がチェリオの丘で誕生する（3才で父が死に祖父マルクス・アンニウス・ヴェルスに育てられる）
・ハドリアヌスはアウレリア街道を北上し南仏に入りルグドゥヌム（現リヨン）へ向かう，数日滞在してライン川防衛線に向かう，ディビオ（現ディジョン）から北上してアウグスタ・トレヴェロールム（現トリアー）に到着する，低地ゲルマニア防衛線と高地ゲルマニア防衛線の高位士官と会合する，モゴンティアクム（現マインツ）へ向かいゲルマニア防壁の視察を行う，ドミティアヌスの防壁をロルヒ迄東へ 30Km程拡張させる
・秋 マインツへ戻り低地ゲルマニア防衛線を視察する，ボンナ（現ボン），ノヴァエジウム（現ノイス），ヴェテラ（現クサンテン），ノヴィオマグス（現ナイメーヘン）と進みライン川河口にフォールム・ハドリアーニの町を建てさせる（ライン川防衛線の刷新）
・ハドリアヌスはヌメルス制度を導入する（パートタイムの季節兵士）AD122 ・ハドリアヌスはライン川河口からブリタニアに向かう
・ハドリアヌスはハドリアヌス防壁（ -1，-2，-3，-4 ）を建設させるが完成を待たずにガリアに入る
・ハドリアヌスが再構築しなければならない案件はほとんど無かったがアヴェーニオ（現アヴィニョン）を建築する
・トライアヌスの妻プロティナの死の報が届く，ハドリアヌスは彼女の故郷ネマウスス（現ニーム）に彼女に捧げた神殿を建てさせる
・エジプトのアレクサンドリアで聖牛が見つかりその所有権を巡る原住民の争いの報が届く，ハドリアヌスはエジプト駐在の長官に一任するが厳重に自重を求める親書を送る
・ハドリアヌスはスペインのタラゴーナで冬越しをする，タラゴーナにイベリア半島の植民都市や地方自治体の代表を招集する，旧来のローマ市民と新来のローマ市民の間に溝があるがハドリアヌスはその調整をする
・滞在中の総督官邸の庭を散策中のハドリアヌスは刃物を持つ奴隷に襲われる，ハドリアヌスは取り押さえて駆け付けた人々に犯人を引き渡す，犯人が狂気に冒されていると知り罰を与えず治療を命ずるAD123 ・ハドリアヌスにシリア属州総督からパルティア王に不穏な動きがみられるという緊急の報告が入る
・ハドリアヌスは自ら出向くと決め数隻の快速船で出港する（サルディニア，シチリア，クレタ，キプロス経由でアンティオキアに至ったと思われる）
・アンティオキアに到着したハドリアヌスはパルティア王との首脳会談を選ぶ，ハドリアヌスは会談の場と決まったユーフラティス川の小島へは軍団を同行させない，会談後に首都に戻ったパルティア王は軍を解散する
・ハドリアヌスはそのまま北上し小アジアの南部，西部を視察する，ロードス島，トロイも訪問する，アテネには向かわずダーダネルス海峡を越えトラキアに向かう，ドナウ川防衛線を訪れドナウ河口からウィーンに向かう
・ティブル（現ティヴォリ）でハドリアヌスのヴィラの建設が始まるAD124 ・ハドリアヌスはドナウ川防衛線から南へ向かう
・ハドリアヌスはオリエント風に顎鬚を蓄える（それまでの皇帝には顎鬚がない）
・ハドリアヌスはアテネで冬越しをするAD125 ・ハドリアヌスは少年期からの憧れであったギリシャで 6か月を過ごす，アテネ，デルフィ，コリント，スパルタ，オリンピア等は漏れなく訪れる，エレウシスの秘儀にも参加する
・ハドリアヌスはギリシャ文明圏の巡航中に美少年アンティーノに出会う
・ハドリアヌスはアテネの公共建築の修理復元を行い新たな市場を建設してアテネ市民に贈る，四大競技会（ピティア競技会，ヌメイア競技会，イストゥミア競技会，オリンピアス競技会）を活性化させる
・ハドリアヌスはゼウス・オリンピア神殿，ハドリアヌス門を着工させる
・ハドリアヌスはピレウス港からブリンディシへは向かわずにシチリア島へ向かう，シラクサ，タオルミーナ，メッシーナ等のギリシャ都市を訪問しエトナ山にも登る
・夏の終り頃ハドリアヌスはローマに帰還する
・ハドリアヌスはイタリア帰還を帝国中にアピールする記念銀貨を発行させる
・ハドリアヌスは 1835組の剣闘士試合を主催しローマ市民に視察旅行の帰還をアピールするAD126 第 2次視察旅行 ・春 ハドリアヌス（ 50才）はヌミディア属州軍団の視察にためにアフリカに向けて発つ，オスティア港からカルタゴに向う，カルタゴに上陸して西南に向いランバシス（現アルジェリアのランベーズ）のアフリカ防衛線の基地に入る（ランベーズで発掘された記念柱にはハドリアヌスの演説が遺る），ハドリアヌスはキレナイカからマウリタニアまでの前線の司令官を召集し話を聞き軍事力の効率化を行う
・ハドリアヌスはランベーズを後にして直ぐ東隣のタムガーディ（現ティムガッド，トライアヌス時代の植民都市）を訪れる
・ハドリアヌスは東進しサブラタ，トリポリ，レプティス・マーニャを訪れる，レプティス・マーニャではハドリアヌス浴場を建設させる
・晩夏 ハドリアヌスはレプティス・マーニャから船でローマに戻る
・ハドリアヌスはローマ法大全の集大成を開始させる（カエサルも挑んだが暗殺で断絶した），法学者ネラティウス・プリスクス，ユヴェンティウス・ケルスス，サルヴィウス・ユリアヌスを登用するAD128 第 3次視察旅行 ・ハドリアヌスは元老院が決議していながら 10年間辞退していた国父の称号を受ける，妻サビーナにアウグスタの称号を与える
・夏 ハドリアヌス（ 52才）は 3度目の視察旅行に出発する，オスティア港からメッシーナ海峡を抜けペロプンネソス半島を廻りアテネに至る，ゼウス・オリンピア神殿，ハドリアヌス門の完成式に出席する，神殿完成の貨幣を発行する，アテネ市民はハドリアヌスにオリンピウスの称号を贈る
・ハドリアヌスが円型堂として再建したパンテオンが完成する
・マルクス（ 7才）は軍神マルスの祭司会の一員となるAD129 ・ハドリアヌスはエフェソスに上陸し小アジアの北部を目指す，シノベ（現シノップ）を中心に黒海沿岸を視察する，アルメニア国境に近いトラペズス（現トルコのトラブゾン）から国境に沿って南下しサタラとメリテネ（現マラティヤ）の軍団基地を視察する
・ハドリアヌスはさらに南下してシリアに向かう，アンティオキアへの途上にあるユーフラテス川上流のサモサタ（現トルコのサムサット）とゼウグマ（現トルコのバルキス）の軍団基地を視察する
・ハドリアヌスはユーフラテス川に近い小都市で中東の王侯達を招待する，パルティア王も出席をする，ハドリアヌスは 14年前にトライアヌスが捕えて人質にしていたパルティア王女を父親のパルティア王に返還する（中東の平和は確認される）
・ハドリアヌスはアンティオキアで冬越しをするAD130 ・ハドリアヌスはアンティオキアからユーフラテス防衛線のパルミラへ向かう，その後ダマスカスへ向かいボストラ（現ブスラ）のアラビア属州軍団の基地を訪れる
・ハドリアヌスはフィラデルフィア（現ヨルダンのアンマン）に向いユダヤ属州に入る，ユダヤ駐屯軍の効率化を行う，軍団基地はユダヤ北部のシトポリス（現ベト・シェアン）に決定する，イェルサレムのすぐ北に軍団基地を置きその基地を中心にする街をアエリア・カピトリーナと名付ける，ハドリアヌスはユダヤ教徒の割礼を禁ずる（ハドリアヌスの根本対策への挑発？）
・ハドリアヌスはエジプトへ向かう，エジプトには皇后サビーナを呼び寄せる，アレクサンドリアのエジプト長官の統治機関とニコプリスの軍団を視察しムセイオン（アレクサンドリア図書館，カエサルが炎上させているが書物の収集は再会され回復している）を訪れる，ハドリアヌスは学者達とのシンポジウムで論戦を挑み論破する
・12/15 ルキウス（後の皇帝ルキウス・ヴェルス）が誕生するAD131 アンティーノ死亡
ユダヤ戦役・ハドリアヌスは皇后サビーナも同道してナイル川周航に出る，アレクサンドリアから 300Kmの上流で美少年アンティーノが溺死しハドリアヌスは女のように泣き崩れる，ハドリアヌスはアンティーノを神格化し事故の対岸の村にアンティノポリスと名付けた町を建設させる
・ハドリアヌスはアラブの駿馬を駆って獅子狩りを行う
・ハドリアヌスは皇后サビーナをローマに帰してシリアのアンティオキアへ向かう，小アジアを北上して黒海へ出てギリシャに向かう，アテネへの途上にハドリアノポリス（現エディルネ）を建設させる
・アテネでアンティーノの像を大量につくらせる
・秋 ユダヤで割礼禁止が原因の反乱が発生する，ハドリアヌスはアンティオキアへ戻る，バール・コクバとラビ・アキバが反乱軍を組織する，ユダヤの武器製造者はわざと欠陥品をローマ軍に納入し撥ねられた武器を反乱軍に回す，ユダヤ商人は毒を混ぜた葡萄酒を納入してローマ兵を弱らせる等の抵抗を行う
・ハドリアヌスは反撃の準備をする，総指揮をブリタニア属州総督のユリウス・セヴェルスに託す（ゲリラ戦法に秀でる），ハドリアヌスと前線司令部はカエサリアに移動する，攻城兵器の改良にダマスカスのアポロドロスが呼ばれる
・ローマ法大全が完成し刊行されるAD132 ・ユダヤ北部の制圧は簡単に終わる，ユダヤ中部はセヴェルスが小隊に分けた絨緞爆撃戦法で制圧する
・夏 ローマ軍による本格的な反撃が開始される
・ユダヤ側ではバール・コクバが割礼を止めた人々のイェルサレムへの出入りを禁ずる（内輪もめ，キリスト教徒への弾圧）AD133 ・ティヴォリのハドリアヌスのヴィラ（ヴィラ・アドリアーナ_1，ヴィラ・アドリアーナ_2）が完成する AD134 ・ユダヤ戦役ではイェルサレムが落城する，イェルサレムは炎上し破壊される
・ハドリアヌスはユダヤをパレスティーナ，イェルサレムをアエリア・カピトリーナと変更する，イェルサレム市内の再建はローマ式都市計画に基づいて行われる
・ハドリアヌスはユダヤ教徒をイェルサレムから全面追放する（ユダヤ人の離散）
・春 ハドリアヌスはカエサリアから船でローマに戻る
・元老院は凱旋式を許可するがハドリアヌスは辞退しセヴェルスに譲るAD135 ・元老院はユダヤ人の離散（ディアスポラ）を正式決定する（以降 20世紀のイスラエル建国まで続く）
・ハドリアヌスは前執政官アントニヌスをアジア属州総督に任命する
・マルクス（ 15才）は成人式を行う，ケイオニウス・コモドゥスの娘ケイオニーナと婚約する
・マルクスはラテン祝祭中の行政長官に任命されるAD136 ・9/26 ユダヤの残党がこもったベティルが落城する，バール・コクバは戦死しラビ・アキバは捕えられ拷問死する（第 2のマサダ）
・ローマに帰還したセヴェルスは騎乗の略式凱旋式を行う
・ハドリアヌスの義兄セルヴィアヌスが孫のペダニウス・フスクス（ハドリアヌスの姪の子）をハドリアヌスの後継者にする運動を開始する，ハドリアヌスは背後で画策されることを嫌い近衛軍団の一隊を送ってセルヴィアヌスと孫を自死させる
・元老院はローマ法大全を完成させた皇帝が自らそれを破ると硬化する
・ハドリアヌスはケイオニウス・コモドゥスを養子にしアエリウス・カエサルに改名させる，護民官特権と軍司令権も与える，3億セステルティウスの費用で剣闘士試合や戦車競走を主催し記念銀貨も発行する（アエリウス・カエサルはハドリアヌスが粛清した ４人の中のニグリヌスの娘を妻にしていた）AD137 アエリウス・カエサル死亡 ・執政官に当選したアエリウスはパンノニアのブダペストへ派遣される（軍団指揮官の体験），地勢や気候の良くない地域でアエリウスは健康を害す
・来年 1/1 の元老院演説の前日アエリウス・カエサルは大量の血を吐いて死亡する（結核？）AD138 アントニヌスを養子にする
ハドリアヌス死亡
アントニヌス・ピウス即位・ハドリアヌスはアエリウスを建設中の新皇帝廟（ハドリアヌス廟，現サンタンジェロ城）へ葬る
・1/24 ハドリアヌスは自分の誕生日にアントニヌス（ 52才）をティヴォリのヴィラへ招待する，訪れたアントニヌスに養子に迎えたい旨を伝える，条件としてマルクス・アウレリウス（ 17才）とアエリウスの子ルキウス・ヴェルス（ 8才）を養子に迎えることが告げられる，アントニヌスは即答せずに皇帝の誕生日を祝う
・2/25 アントニヌスは養子を受諾する，ハドリアヌスは直ちに公表する，暫定措置法を発令して元老院の採決を受けずに決定する（マルクスへの中継ぎ），元老院からは好評で迎えられる
・ハドリアヌスは北アフリカ出身のコルネリウス・フロント等をマルクスの教育係とする（帝王教育）
・春 ハドリアヌスは自分の死を予期してかそば近く使える奴隷に短剣を渡しこの胸を刺せと命ずる，奴隷は驚愕し出来ませんと涙を流し許しを乞う，奴隷はアントニヌスに報告する，アントニヌスはティヴォリに駆け付け皇帝を諌める，激怒したハドリアヌスは奴隷は死罪だ叫ぶ，アントニヌスは奴隷を隠す，その後もハドリアヌスは自死を試みるのでティヴォリに駆け付けたアントニヌスは短剣を隠す，ハドリアヌスは医師に毒薬を調合する様に命ずるが医師は調合した毒薬を飲んで自死する，ハドリアヌスの癇癪は元老院に向けられ元老院議員を告訴する，アントニヌスは告発された人々を正式な裁判にもって行くようにしその裁判も繰り返し延期する
・アントニヌスはハドリアヌスに海にでも行って環境を変えたらどうかと勧める，ハドリアヌスはローマを通過してドミティアーナ街道を抜けナポリ近くのバイアのヴィラ（元キケロの別荘）へ行く
・7/10 急変を告げられてローマから駆け付けたアントニヌスを待つかのようにハドリアヌス（ 62才）は死亡する
・アントニヌス（ 52才）は元老院議会を招集しハドリアヌスの死を報告しハドリアヌスの神格化を要請する，少なくない元老院議員は神格化を拒否する動議を提出する，アントニヌスは涙を流さんばかりに議員達にハドリアヌスの神格化を求め続けハドリアヌスの神格化は決定される，以後アントニヌスはアントニヌス・ピウス（慈悲深い人）と呼ばれる
・ハドリアヌスの遺灰はハドリアヌス廟に葬られる
・アントニヌス・ピウスはマルクス（ 17才）にアエリウス・カエサルの娘との婚約を破棄して自分の娘ファウティーナ（ 8才，アエリウス・カエサルの息子ルキウスと婚約していた）との婚約を問う，マルクスは受ける（従兄妹の関係）AD139 ・マルクスは会計検査官に選出され次年度執政官の立候補も決まる
・アントニヌス・ピウスはハドリアヌス廟とアエリウス橋（現サンタンジェロ橋）を完成させる
・アントニヌス・ピウスは国父の称号を受ける，妻ファウスティーナにアウグスタの称号を与える
・ブリタニアのハドリアヌス防壁の外で反乱が発生する，ブリタニア駐屯の 3個軍団は鎮圧に釘付けになるAD140 ・マルクス（ 18才）はアントニヌス・ピウスと共に執政官に就任する
・アントニヌス・ピウスの皇后ファウスティーナが死亡する，アントニヌス・ピウスは妻の遺産でファウスティーナ基金を作り恵まれない少女達の婚資を援助するAD141 ・アントニヌス・ピウスはフォロ・ロマーノにファウスティーナ神殿を築かせる AD142 ・ブリタニアの反乱は鎮圧されアントニヌス・ピウスはハドリアヌス防壁の外側にアントニヌス防壁を建設させる AD143 ・アントニヌス・ピウスはコルネリウス・フロントをルキウス・ヴェルスの教育係とする
・ギリシャ人アエリウス・アリスティデス（ 26才）はローマ建国祭でアントニヌス・ピウスや元老院議員を前にローマを讃美する演説（ローマへの頌詞）を行うAD145 ・アントニヌス・ピウスはハドリアヌス神殿を完成させる
・マルクス（ 24才）はアントニヌス・ピウスの娘ファウスティーナ（ 15才）と結婚するAD147 ・11/30 ファウスティーナは女児を出産する，12/1 アントニヌス・ピウスはマルクスに護民官特権を与えファウスティーナにアウグスタの称号を与える AD161 アントニヌス・ピウス死亡
マルクス・アウレリウスとルキウス・ヴェルスが即位・3/6 ロリオの別邸に滞在中のアントニヌス・ピウスは夕食を終えると食べたものを吐く，その夜と翌日高熱が続く，マルクスとルキウス・ヴェルスが駆け付ける，3/8 近衛軍団長官が呼ばれ国葬は壮麗しすぎないようにと伝えアントニヌス・ピウス（ 74才）は死亡する
・マルクスとルキウスは国葬を行いアントニヌス・ピウスの遺灰をハドリアヌス廟に葬る
・マルクスは元老院にアントニヌス・ピウスの神格化を求めるが元老院は既に決議していた
・フォロ・ロマーノのファウスティーナ神殿はアントニヌスとファウスティーナの神殿となる
・元老院はマルクスに皇帝受諾を問うがマルクスは自分とルキウスの 2人であると言明する，元老院は 2人を皇帝にする，インペラトール・カエサル・マルクス・アウレリウス・アントニヌス・アウグストス（ 40才）とインペラトール・カエサル・ルキウス・アウレリウス・ヴェルス・アウグストゥス（ 31才）となる
